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飲食店の食材ロス
個人店にできる、5つの減らし方

閉店後、余った仕込みを袋に入れる。一回ぶんは数百円でも、1年ぶん積み上げると無視できない額になります。新しい設備も、難しい仕組みも要りません。今日から手をつけられるところだけをまとめました。

大鍋で煮込みを仕込んでいる居酒屋の店主

「もったいないけど、しょうがない」。食材を捨てるとき、私たちはだいたいこう思って手を動かします。いちいち落ち込んでいたら、翌日の営業に差し支えます。だから割り切る。それ自体は、悪いことではありません。

ただ、割り切ったぶん捨てた量が記憶に残りません。残らないから、次の発注も、次の仕込みも、同じ量になります。ここが厄介なところです。

この記事では、金額をつかむところから、実際に減らす手順までを順番に説明します。

ロスは「捨てる瞬間」ではなく、その前に決まっている

生ゴミの袋を縛るとき、私たちは「今日は多かったな」と感じます。でも、その日の勝負はもう終わっています。

ロスが決まるのは、もっと前の3か所です。

つまり、手を入れるべきなのはゴミ箱の前ではなく、この3か所だということです。ここを押さえずに「捨てないようにしよう」と気をつけても、たいてい元に戻ります。

手その0|まず1週間だけ、捨てたものをメモする

いきなり減らそうとせず、最初の1週間は記録だけにしてください。何をどれだけ捨てているか、ほとんどの店主は正確に把握していません。私も聞かれたら答えられないと思います。

書くのはこの5つだけ

「捨てたものメモ」の書き方(例)

日付 品目 だいたいの量 金額 なぜ余ったか 7/28 キャベツ 1/2玉 120円 仕込みすぎ 7/30 ぶり(刺身用) 3切れ 900円 予約キャンセル 8/1 だし巻き用の卵 6個 180円 ランチが不調 この1週間の合計 8,400円 → 1日あたり 約1,200円
凝った表は要りません。レジ横のノートに1行ずつで十分です。1週間ぶん書けたら、いったん合計してみてください。

1ヶ月やろうとすると続きません。まずは1週間。それで十分に足りる材料が集まります。

捨てているのは、いくらぶんなのか

1週間の合計が出たら、掛け算をします。ここが、この記事でいちばん効く場面です。

1週間の廃棄 8,400円 ÷ 7日 = 1日あたり 約1,200円
1,200円 × 月25日営業 = 月30,000円
30,000円 × 12ヶ月 = 年36万円

ここからもう一歩進めます。捨てているのは「原価」なので、売上に直すともっと大きな数字になります。

仮に原価率30%のお店だとすると、原価1,200円ぶんの食材は、売れていれば4,000円の売上になっていた計算です。年間36万円なら、120万円ぶんです。

1日1,200円の廃棄は、1年でいくらか

× 25日 × 12ヶ月 1日あたり 1,200 1ヶ月 30,000 1年 36万円 原価率30%のお店なら、この36万円ぶんの食材は 売上120万円になったはずの量
ただし、余った食材が必ず全部売れたとは限りません。あくまで「これだけの機会があった」という上限の見方です。それでも、桁の感覚をつかむには十分だと思います。

「たかが1,200円」が「年120万円」に変わると、手をつける気になります。逆に言えば、金額にしないうちは、誰も本気で減らせません

手その1|上位3品目だけに絞る

カウンターに積まれた市場の納品書の束とボールペン
捨てているものと、納品書の金額の大きいものは、たいてい重なります。

1週間ぶんのメモを眺めると、たいてい特定の品目に偏っていることに気づきます。全部が少しずつ余っているのではなく、いつも同じものが残っている。

ここで全品目を管理しようとすると、必ず続きません。金額の大きい上位3品目だけに絞ってください。多くの場合、捨てている金額のかなりの部分がそこに集まっています。

絞った3品目については、次の2つだけ決めます。

手その2|「使い切りの出口」を先に決めておく

これがいちばん効きます。仕込む前に、余ったときの行き先を決めておく。それだけです。

仕込む前に、出口を4つ用意しておく

仕込んだ食材 その日に 売り切る 翌日の 日替わりへ 小分けにして 冷凍する まかないで 食べる 出口を決めていない食材だけが、ゴミになります
①だけを狙うから、外れたときに全部が損になります。②〜④があると、多めに仕込んでも痛手が小さくなります。

出口が決まっている食材は、少し多めに仕込んでも損になりにくい。逆に、出口のない食材こそ「足りないよりマシ」で作ってはいけないということでもあります。

変換の例も、あらかじめ考えておくと動きやすくなります。煮物は崩してコロッケの具に、刺身のツマは味噌汁に、焼き魚用の切り身はほぐして混ぜご飯に。こういう「逃がし方」を3つ持っておくだけで、閉店後の判断がずいぶん楽になります。

手その3|途中で止められる工程を探す

窓辺の厨房で大根を切り分けている店主
下ごしらえまでで止めておけば、翌日にも回せます。

仕込みには、戻せる工程と戻せない工程があります。

唐揚げなら、味を漬けるところまでは翌日に回せます。でも揚げてしまうと戻せません。おでんなら、大根の下茹でまでは持ちますが、鍋に入れて煮込んだら煮込んだぶんだけ痩せていきます。

やり方はこれだけ

手間は少し増えます。ただ、客数のばらつきが大きいお店ほど、この形が効きます。「平均30人だけど10人の日も50人の日もある」というお店は、平均に合わせて全部仕上げると、どちらに転んでも損をします。

手その4|発注のロットを、一度疑ってみる

「これは1ケースからしか買えない」と思い込んでいるものが、聞いてみると半ケースで入ることがあります。長年その単位で頼んでいるだけ、というのはよくある話です。

一度、担当の方に「小口で入りませんか」と聞いてみる価値はあります。断られても、失うものはありません。

近所に同業の知り合いがいれば、まとめて仕入れて分ける手もあります。1ケースを2軒で割れば、単価はそのままで在庫は半分になります。

手その5|曜日と天気で、発注量を変える

そもそも「明日どれくらい来るか」の精度が上がれば、ロスは自然に減ります。ここは別の記事で詳しく書きました。

飲食店の仕込み量の決め方|「勘」を数字に変える5つのステップ

ざっくり言えば、曜日ごとの平均客数を出しておき、雨の日や猛暑日には自分の店の係数を掛ける、というやり方です。ロス削減とは表と裏の関係なので、あわせて読んでいただけると、つながりが見えると思います。

やってはいけない減らし方

1. 品切れ覚悟で、絞りすぎる

仕込みを大幅に減らせば、廃棄はほぼゼロになります。でも、それは売り逃しと交換しただけです。「今日もないの」が続けば、常連さんは静かに来なくなります。ロス削減は利益を守るためのもので、売上を削るためのものではありません。

2. 傷みかけを、無理に出す

これは論外ですが、追い詰められると判断が鈍ります。金額の話をした直後なので、あえて書いておきます。36万円を惜しんで信用を失えば、取り返しがつきません。

3. 安い食材に替えて、原価だけ下げる

原価率の数字は良くなります。ただ、味が落ちれば客数が落ちます。「捨てる量を減らす」と「使う食材の質を下げる」は、まったく別のことです。

今週からの、進め方

全部を一度にやろうとすると、確実に途中で止まります。順番はこうです。

  1. 今週……捨てたものをメモするだけ。減らそうとしない
  2. 来週……合計を出し、金額の大きい上位3品目を決める
  3. 再来週……その3品目に「出口」を用意する
  4. その次……戻せない工程を控えめで止めてみる

1ヶ月で、だいたいの形になります。効果が数字で見えるのは、その次の月からです。

そして、ここまでの全部が「明日、何人来るか」の精度にぶら下がっています。予測が当たるほど、出口も止め時も要らなくなる。だから最後は、そこに戻ってきます。

毎日の記録と天気の突き合わせを手作業で続けるのが難しければ、そこを自動化する仕組みに任せる手もあります。私たちが作っているコミヨホウは、まさにこの部分を代わりに計算するサービスです。

ただ、この記事の1〜5だけでも、ロスは確実に減ります。 まずは今日の閉店後、捨てたものを一行書くところから始めてみてください。

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